あ~れ~~~
もう…びっくりしちゃった。 誰かと思ったらお父さまじゃないの。 向こうから素っ裸の男の人が血相変えて走ってくるから、 てっきり変質者かと思っちゃったわよ。 覚えてくれてる? 私、「アマテラス登場」のときの草野姫です。 そうだったわね。 お母さまが亡くなったという悲しい知らせは私のところにも届いてた。 「はじめ、妻のことを悲しみ、偲んだことは、私が弱かったのだ。」 お母さまと黄津平坂(よもつひらさか)で別れを告げたとき、 お父さまはそうおっしゃったそうだけど、ホントにそうかしら。 妻や夫を亡くしたとき、 悲しみ、偲ぶことは、とっても自然なことだけど、 もし、お父さまに非があるとしたら、 お母さまを想うあまり、生と死の境を越えてしまったことじゃないかしら。 死が美しいものだなんて、 ヒトの中には思っている者もいるそうだけど、 死が本当はどんなものなのか、これできっと分かったわね。 ああ、こんなことを言ってる場合じゃないわ。 ともあれ、お父さまの穢れをすすぎはらわなくっちゃ! 私たちは、粟門(鳴門海峡)と速吸名門(豊予海峡)を見たけど、 ここはダメね。潮の流れが早すぎるわ。 それから、私たちは橘の小門(日向)に向かって、 ここでお父さまは、穢れをすすぎはらったの。 このときも、お父さまはたくさんの神々を生まれたわ。 で、すべての役目を終え、幽宮(かくれのみや)に入ってしまわれたの。 ウゥ…淋しいよ~(>_<) って、ファザコンの私としては、もう少しお父様の死を悼んでいたかったのだけど、 またまた、大事件勃発! いったい、うちの家族はどうなってんだぁ? 私の妹と弟であるアマテラスとツクヨミ←(月読尊(つくよみのみこと)のことよ)が、 光り輝くように美しかったので、 お父さまの命令で、天界を治めることになったのは知ってるよね。 (「アマテラス登場」の章を参照) あるとき、アマテラスがツクヨミに、 「葦原中国に保食神(うけものかみ)がいると聞いている。 お前、行ってみてまいれ。」 と言ったそうなの。 で、まあ、ツクヨミは、 また地上に戻って保食神(うけものかみ)のところに行ったのだけど、 この保食神(うけものかみ)というのが・・・ まず、首を陸の方に向けると、口から飯が出てきて、 首を海のほうに向けると、 口から、鰭(はた)の広もの、鰭の狭(さ)きものが出てきて、 首を山のほうに向けると、 口から、毛の麁(あら)もの、毛の柔(にご)ものが出てきたというの。 もちろん、遠く天界からやってきたツクヨミにご馳走するためよ。 でもね、ツクヨミは顔を真っ赤にして怒って、 「なんとけがらわしい、またいやしいことだ! このおれを馳走するのに、どうして口から吐き出したものなど使えようか!」 って言って、剣を抜いて、保食神(うけものかみ)を殺してしまったの。 ちょっぴり、その気持ち、分からないでもないけどね~ ツクヨミにしたって、自分が悪い事をしたなんて全然思ってないから、 天界に戻って、そのことをアマテラスに報告したわ。 でも、その報告を聞いたアマテラスはカンカンになっちゃって、 「お前は悪い神だ。もうお前には会いたくない!」 って言ったの。 でもって、アマテラスとツクヨミは、一日一夜だけ隔てて離れて住むことになって、 それで、天には、太陽がいるときと、月がいるときがあるってわけ。 もう仲良く、並んで天にいる太陽と月を見ることは出来ないわ。 ツクヨミも、大変なことをしでかしたものよ。 その後、アマテラスは天熊人(あまのくまひと)を、 保食神(うけものかみ)の看護のために遣わしたけど、 天熊人(あまのくまひと)が到着したときには、 すでに、保食神(うけものかみ)は死んでしまっていたの。 保食神(うけものかみ)の亡骸の、 頭には馬と牛が化(な)りいでていて、額には粟が生まれていたわ。 眉の上には蚕が生まれ、目の中には稗が生まれていた。 腹の中には稲、陰部には麦と大小豆。 天熊人(あまのくまひと)は、このことをアマテラスに報告して、 これらのものをことごとく持参してアマテラスに献上したの。 天熊人(あまのくまひと)は、律儀な忠義者だもんね~ めっちゃ、重かったと思うわよ。 でもまあ、その甲斐あって、アマテラスは大喜びで、 「これは顕見(うつ)しき蒼生(あおひとくさ)が食べて生活するために必要なものである。」 と言って、 粟・稗・麦・豆を畠の種として、稲を水田の種としたそうよ。 その稲種を天狭田(あまのさなだ)と長田(ながた)に植えたら、 秋には稲の穂がたわむほど成長して、気持ちのいいことったら! 蚕はどうするのかなぁ…?と思って見ていたら、 アマテラスがいきなり口の中に入れたの。 なるほど食べるのね! と思ったら、なんと、口から糸を抽(ひ)き出したの。 その糸で衣を織ると、すばらしく美しい衣が出来たわ。 わが妹ながら、アマテラスって天才♪ あれで、あのヒステリーさえ治してくれたらもっといいんだけどね~ ともあれ、保食神(うけものかみ)さん、ごめんなさい。 わが弟、ツクヨミがとんでもないことしちゃって、 ご冥福をお祈りします。(合掌) なんて、感傷にふけっていたら、 「あ~れ~~・・・・・・・」 耳がつぶれそうな大声。 何かと思ったら、アマテラスの声ではないの。 また事件? ホントにもう、うちの家族ったら!
by pain0107
| 2004-05-21 16:01
| 1.神代上 -その2-
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